自己紹介:櫻井 あゆ子(コーポレート・プランニング・グループの”自己紹介” ブログ(Vol. 2))
このブログを読んでくださっている皆さま、こんにちは。弊研究所に入って2日目の櫻井あゆ子です。この自己紹介ブログの執筆が、弊研究所での初仕事となりました。せっかくですので、なぜこの研究所に興味を持ったのか、私の履歴を紹介しつつ振り返りたいと思います。
私は15歳でスイスの高校に通い始めてから、その後11年間にわたり海外を拠点に生活してきました(スイスを目指した明確な目的などは皆無で、当時私を囲んでいた環境を出たいという突発的で強い思いに動かされていました。若い頃は特に、自分の感覚頼りに行動していた気がします)。米国の大学、大学院にて芸術の勉強に励みましたが、就職の段になって躓きます。優秀な移民の雇用ができる大企業とのつながりもなく、ほかの多くの留学生と同じように、学生ビザで保障される期間の終わりを恐れながら、日々仕事を探していました。そんな折、歯科技工士の仕事を紹介され(歯科技工士が義歯制作に使う道具と、私が専攻にしていた金属芸術の分野で親しんでいた道具とは、かなり親和性があったのです)、この職場から就労ビザ支給を約束されたことが決定打となり、就職します。しかし3ヵ月も経たぬうちに、「うちの会社、もともとビザ支給がなかったんだよね」とマネージャーに聞かされ、ほかに打つ手もなく2018年に日本へ帰国します。大学院を卒業したての身ということもあり、だまされた恨みや心細さもさることながら、大変に歯がゆい思いをしたのを覚えています。
しかしコロナ・パンデミックに襲われた今になって思えば、私はつくづく幸運ですね。米国勢でも増加した、アジア人に対するヘイトクライムに遭うことはなく、不安定な雇用に怯えることなく、住んでいる共同体で唯一の日本人であるという不安から周囲に攻撃的になることなく、日本での日々を過ごせていました(ダイヤモンドプリンセス号の集団感染のニュースがあったのは、日本に帰国して2年ほど経った頃でした)。2019年に東京のミュージアムで勤め始めたので、この頃同年代の日本人と関係ができたのも、新鮮な点でした。そして、自分の英語や海外生活での経験を仕事に活かしたいという強い希望もあり、このミュージアムで国際業務に積極的に関わります。普段はお目にかからないようなV.I.P.―閣下の称号を持つような方もいました―にミュージアムを案内したり、その縁で大使館へ招かれたりしました。国際会議に登壇し、教育関係のワークショップ開発に携わり、研究者と市民の間にコミュニケーションが生まれるような手法を考えるなど、実に多岐に渡る業務を担当しました。もとは「海外での経験を活かしたい」「組織の設立理念に共感した」という理由でこのミュージアムに興味を持ったのですが、国際業務や海外関係者とのネットワーキングに関わるうち、やはり自分にはこうした業務が合っていると確信を深めていきました。
とはいえ、このポジションは5年間の任期付きで程よいところで新しい縁を掴みにいかなくてはいけません。米国滞在時、3桁を超える組織や会社に応募したものの、収穫なしだった日々が思い出されます。今のミュージアムの職に辿り着くまでの苦しさも。まあ、多くの方々が多少なりとも苦労をして職を探すのですから、ある程度の時間気力体力は見込んでおくべきでしょう。そんな見積もりをしつつ、私は2023年の春から本格的に、国内外を問わず求人サイトをめぐり、お決まりの書類作成や面接を重ねていきました。なにせ今の私には「1つの組織で5年近く勤め上げた」という証明、いうなれば信用がありますからね。運が良ければ数カ月で、ふさわしい所と出会える筈です。
さて、結論から言うと、なんの因果なのでしょうか、2023年の12月になっても、私は求人サイトを巡っていました。外部に評価されるような実績も能力も一応は得たはず、ついでに転職市場は盛り上がっているから状況は私に追い風のはず、と思っていたのですが。ただ、思うようにいかないのが世の常ともいいますし、腐らずにまずは過ごしてみよう、一カ月先にどうなっているのか分からないのだから、と自分を落ち着かせる日々でした。そんな折、新しく登録した転職エージェントからの配信メールにあった、弊研究所の求人が目に留まります。実際に求人票を確認してみたところ、業務内容に興味は惹かれたのですが、Pax Japonicaという言葉の裏にある思想に見当がつかず、その求人票を保存リストに置いたまま、ほかの求人への応募を続けました。しかしそれから数日後、やはり怖いもの見たさといいましょうか、好奇心が勝り、例の言葉を調べてみました。世界史で習った、パクスロマーナ的ななにかを連想し、しかし日本中心主義のような得体の知れない思想かもしれない、「優劣よりもオンリーワンの個性が大切」という時代に育った私には刺激が強すぎるかもしれない、と思いながら。
その流れで弊研究所のウェブサイトにある数々のレポートを読んだところ、これまでミュージアムで担当してきた仕事、例えば国際関係の強化や、様々な分野のパブリックエンゲージメント(研究者起点の社会への発信など)に近い業務があるのかな、という印象を受けました。
昨日(20日)の入所日から2日が経ち、まだわからないことが多いのですが、存分に学び、意義のあるものを得るつもりです。 とりわけ、“Pax Japonica”の定義の中には「パブリックエンゲージメント」という要素がありますが、自身のこれまでの経験を活かして社会に貢献していく所存です。これからどうぞよろしくお願いいたします。
社会貢献事業担当 櫻井あゆ子 拝