RIJAG代表理事・原田武夫がナザルバエフ大学主催の国際学会「GSPP Conference 2026」にてAI活用型ガヴァナンスに関する研究成果を発表

2026.10.27

一般社団法人日本グローバル化研究機構(RIJAG:Research Institute for Japan’s Globalization)は、2026年10月16日(金)、カザフスタンのナザルバエフ大学(Nazarbayev University)公共政策大学院が主催する国際学会「GSPP Conference 2026」において、弊機構代表理事・原田武夫が研究発表を行ったことをお知らせいたします。

本学会は、「Reimagining Governance: Power, Policy, and Public Good in a Fractured World(分断された世界におけるガバナンスの再構想:権力・政策・公共善)」をテーマに、公共政策やガバナンスをめぐる現代的課題について、国際的な学術交流を促進するものです。

原田は「Digital and AI-Enabled Governance(デジタル・AI活用型ガバナンス)」をテーマとするオンライン・セッションに登壇し、以下の研究発表を行いました。

発表題目:

「デジタル政府からAI活用型ガバナンスへ:開発国家における制度的ロックインの克服」

From Digital Government to AI-Enabled Governance: Overcoming Institutional Lock-in in Developmental States

本研究では、人工知能(AI)が従来の行政業務のデジタル化や効率化を超え、国家の統治制度そのものの変革にいかに貢献し得るのかという、現代の公共ガバナンスが直面する根本的な課題を取り上げました。

1.行政の効率化を超えた制度変革の可能性

今回の研究発表では、世界各国で行政のデジタル化が進展する一方、行政手続きの効率化や公共サービスの改善が、必ずしも統治制度そのものの変革につながっていないという問題を提起しました。

特に、戦後日本の開発国家(Developmental State)としての経験に着目し、かつて高度経済成長や産業発展を支えた制度的枠組みが、時代の変化とともに経路依存性(Path Dependence)や制度的硬直性を生み出す可能性について分析しました。

その上で、重要なのは既存の行政手続きを単にデジタル化することではなく、経済・技術・地政学的環境の変化に適応できなくなった制度的枠組みそのものを再検討することであると論じました。

2.「AI活用型ガバナンス」の4段階分析モデルを提示

本発表では、既存制度の内部における行政効率の向上を目指す「デジタル政府(Digital Government)」と、制度そのものを再検討する能力の向上を目指す「AI活用型ガバナンス(AI-enabled Governance)」を概念的に区別しました。

その上で、AIを活用した制度変革の可能性を分析するため、以下の4段階からなる理論的枠組みを提示しました。

  1. 制度間関係の高解像度での観察:AIを活用し、行政機関や制度間の複雑な相互依存関係を詳細に分析する。
  2. 制度的ボトルネックの特定:単なる業務上の非効率性と、制度構造そのものに起因する制約を区別する。
  3. 制度の再構成:国家に不可欠な統治能力を維持しながら、代替的な制度設計の可能性を検討する。
  4. 実施の加速:AIによる分析、組織間調整、モニタリング、継続的学習を通じて制度変革の実施を支援する。

なお、本枠組みはAIによる制度変革の可能性を検討するための概念的・分析的モデルであり、実証済みの因果モデルとして提示されたものではありません。

また、AIが人間の判断や政治的意思決定を代替するのではなく、人間の主体性(Human Agency)、説明責任(Accountability)、適切な公共ガバナンスを維持することが不可欠である点も強調しました。

3.中央アジアへの示唆と国際比較研究の意義

今回の研究発表では、日本の制度的経験が、経済の多角化、統治制度の近代化、地政学的変動といった課題に直面する中央アジア諸国に対して持つ比較研究上の意義についても検討しました。

日本の開発国家モデルをそのまま他国へ移植するのではなく、各国固有の歴史的・制度的条件を踏まえながら、国家の統治能力、制度の適応能力、技術革新の相互関係を比較分析する視座を提示したことが特徴です。

とりわけ、持続的な経済発展に必要な行政能力や政策調整能力を維持しつつ、AIによって制度の柔軟性と適応能力をいかに高めることができるのかという問題は、中央アジアのみならず、多くの開発国家・移行国家に共通する重要な研究課題として位置付けられます。

4.人間中心のAIガバナンスに関する国際研究の推進

今回の発表は、RIJAGが推進する、人工知能、制度変革、公共ガバナンス、人間の主体性をめぐる国際的な研究活動の一環として位置付けられるものです。

本研究の中心的な問題意識は、AIの変革的な可能性が、単に既存制度の効率性を向上させることにとどまらず、社会が自らの制度をどのように進化させるべきかを再考する能力を高める点にあるというものです。

同時に、制度変革における最終的な判断と責任は人間に帰属するという原則を重視し、AIによる分析支援を通じて、より適応力があり、包摂的で、強靱かつ平和な社会の実現に貢献する可能性を追究しています。

RIJAGは今後も、国際的な学術連携、制度に関する比較研究、研究者・政策担当者との対話を通じて、AI活用型ガバナンスに関する研究をさらに発展させてまいります。

最後に、今回の国際的な学術交流の機会を提供してくださったナザルバエフ大学ならびに学会関係者の皆様に、深く感謝申し上げます。

Create a Better World Together.

一般社団法人日本グローバル化研究機構(RIJAG)


【関連リンク】

ナザルバエフ大学 GSPP Conference 2026

https://gspp.nu.edu.kz/conference