国際会議を対面で実施する効果 (コーポレート・プランニング・グループの”社会貢献事業”ブログ(Vol. 5))

2024.04.30

新型コロナウイルスが2019年に発生して以降、現在でも基本的に会議がWeb形式になったという企業は多いだろう。参加人数が多い会議では場所の確保が不要なことから主催者としては大きな利点がある。参加者としても外部の会議の場合は移動時間や交通費がかからずに気軽に参加できることは大きな利点である。2024年2月に実施された調査ではWeb会議と対面での会議のどちらが良いかとの質問に半数近くの人がWeb会議と回答している例もある(下図参照)。

(参考:Biz Hits

この風潮が続けば今後は会議が全てWeb形式になってしまうこともあるのではないかと思われるかもしれない。しかし国際会議をWeb形式で実施することは、重要な会議であるほど選択肢として挙がらない。これは対面で会議を実施することに意味があることを多くの人が理解しているからである。例えば、国際会議であっても打ち合わせとして相談を行うだけのものであればWeb形式で実施することが十分に考えられる。一方で決定や交渉を伴うものは、打ち合わせ時点で合意が得られることが明確でない限り、対面で実施することが一般的ではないだろうか。Web会議を好む人の割合が全体の半数程度に上る一方でその不便さを感じている人の割合が高い(下図参照)。

(参考:Biz Hits

人間には非言語コミュニケーションの能力があり、思いを伝えるのは言葉だけではないということは、1987年に書かれたマジョリー・F・ヴァ―ガス著の『非言語(ノンバーバル)コミュニケーション』に記されている。この本を読むと、どのような側面から国際会議を対面で実施することが効果的なのか理解できる。これは同時にWeb会議の最大の弱点でもあることから、この本の中の、話の相手が興味を失った時に見られる動作や目の力、沈黙について若干触れたい。 まずは動作について、自身が業務上で外部の方と対話していることを思い浮かべてみる。この時にペンを持った相手がそのペンを回し始めたり、時計を気にしたり、貧乏揺すりを始めたら言葉を発せずとも相手が会話内容に満足していないと理解するだろう。

次に目の力については、ずっと見つめると異性の好意を引き寄せることもできたり、睨むことで相手を打ち負かすこともできる。また会話をする際に相手をどのくらい見つめられるかによって、言葉無くして相手の性格が想像できる。一般的に頻度と持続時間が長い程その人物が外向型であり、その逆が内向型と言われているのだ。

最後に沈黙については、交渉の際などに、間の取り方によって相手の心理状況を感じ取ることができる。沈黙にはただ落胆しただけであるか、こちらからの解を求めているのか、次の話題を振るように仕向けているのか等、行為自体に意味がある。そこに至った経緯や交渉における相手が考えているだろう理想を想像しながら故意に沈黙をして非言語コミュニケーションを行っていることもある。

対面で相手と話したりその場に居合わせたりすると、動作、視線、呼吸を観察することができるため、非言語コミュニケーションを図ることができるのである。政治的なレヴェルで考えると、外国との重要な会合を開いたり交渉を行ったりする際には、この非言語コミュニケーションが上手にできることが重要である。言語が通じないことに加えてお互いに自国の利益につなげることを意図しているからこそ、全身を使って表現を行い交渉していくことが求められる。

弊研究機構としては昨年(2023年)10月末から11月頭に開催された「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」に参画した。本国際会議は1995年に第1回が開催され、当時の参加国は既に150か国を超えており、当時から気候変動に対して国家レヴェルでの対策が必要とされていた。気候変動に対しては年を追うごとに更に問題が深刻化していくことから、COPへの参加国は益々増え、昨年は197か国が現地に集った。この規模の国際会議では発言権があるのは各国1名であり、その他の聴衆は新しい条約の制定に対して直接的に関与できない。それでも実際に会場に出向く理由は、そこで得られる情報量が圧倒的に多いことである。昨年のCOPは1日延長したが、これは実際に現地で参加した者であれば、現場の雰囲気だけである程度察することができたと思料する。会議だけをオンラインで聞いていたのであれば、会場の外でデモを行っている大勢の人を目にすることもなく、会場での沈黙や拍手の大きさ、発言者の声のトーンを感じ取ることは難しい。また、このような現場での状況把握に加え、国際会議では現地に出向くと参加者と交流することができる。同じトピックに関心を持ちながら自国で聴かれないような異なった意見を持っている相手と交流する場合もあり、視野や知見が広がる。COPでは弊研究機構も規模が小さい団体であるにも関わらず、その活動内容は一般論とは異なる斬新な考えに基づいていることから、議長からも賞賛いただいた。直接会場に出向くことで得られた好例の一つである。

弊研究機構の活動である「Pax Japonica(パックス・ジャポニカ)」は、四半期に一度、姉妹団体のIISIAで活動報告を行っている。これまでオンラインでの活動もあったが、やはり対面でご説明する方がより理解が深まったとの声も聞く。

今後も国際会議に対面で参加し、その場に行ったからこそ得られる利益を十分に享受し、且つ、弊研究機構からもセミナーなどの機会を活用し情報を提供することで、より多くの方々に我々の活動を認知頂きたいと考える。

社会貢献事業担当 近藤 由貴拝

国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)への参画

ニッポン復活のカギを握るのは交渉力と情報力だ