国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)への参画
過日より交渉が続いていた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)ですが、一日の延長を経て閉幕しました。今回採択された合意文書には、初となる「化石燃料からの脱却を加速」という言葉が明記されました。化石燃料に頼ったエネルギーからの転換を迫るものではありましたが、文書には「抜け穴」も様々な方面から指摘されております。そこで今回は現場での様子をご報告申し上げます。
COPという枠組み自体の目的は大気中の温室効果ガス濃度の安定化にあり、1992年に採択され同年にリオデジャネイロで開かれた地球サミットで署名が始まりました。1回目のCOPは95年にドイツ・ベルリンで開催して、新型コロナウイルス流行の影響で延期された2020年を除き、年に1回開催されております。
そして今回のCOP28では、世界の200近い国々が協力して脱炭素化に取り組むことを約束したパリ協定につき、実施や追加ルールを議論する場としてアラブ首長国連邦(UAE)ドバイにて開催されました。
開催場所はExpo City Dubaiというドバイの中心にある最先端のイヴェント施設です。現場では大きく分けて二つのゾーンがあり、会合が成される大きなホールと各国が出展するパビリオンのゾーンがありました。我が国のパビリオンでは日本企業が脱炭素を巡る技術を海外の方に認知頂く場として活用されておりました。
一方で、メディア等でも見かけるCOP議長が講演する場所は講演ホールで、連日多くの関係者の前でCOP28議長によりスピーチがなされておりました。現場では議論が収斂されずプログラムの時間が延びる中、一言一句言葉に緊張感を帯びせつつ最後まで各国に妥協点を探ることをお願いする議長の姿勢が印象的でした。
今回のCOP28では、主に①グローバルストックテイク(全体的な進捗評価)の実施と2035年目標、②化石燃料エネルギーの段階的廃止の合意可否、③「損失と損害」の資金組織の立ち上げに注目が当てられておりました。気候変動による「損失と損害」の基金運用化については合意を得たものの、その後の交渉は難航し、直接的な化石燃料の段階的廃止の言葉は盛り込まれませんでしたが、化石燃料から転換していくことに合意して終了しました。このような各国による外交が展開されている中、会場の外では途上国や特定の団体によるデモ行進も行われており、こちらも政治的なメッセージを伝える場として重要な場面でした。
グローバル社会全体を巻き込む会合だからこそ妥協点を見出すことが難しいと感じた一方で、国連環境計画(UNEP)が報告した通り世界の平均気温は今世紀末までに産業革命前から約2・9度上回る現状をどう打開するのかについて、次のCOP29でも議論が続く見込みです(参考)。
弊研究機構としても、今回特にCOP28 Day10で注目を浴びた「水資源」については2019年より世界水会議への加盟を通じて取り組んでおります。とりわけ世界水会議が開催する第10回世界水フォーラムにはアジェンダを策定するメンバーとして参画しており、気候変動などのグローバル課題解決に向けて人員強化など取組みも加速しております。
最後に、今回COP28の議長を務められたUAEのスルタン・ジャベル産業・先端技術相より弊研究機構の活動に賞賛のお言葉を頂きましたことから、引き続き我が国からモデルを示すという「Pax Japonica(パックス・ジャポニカ)」の実現を目指し、ご報告できればと考えております。
引き続き、ご支援ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。
社会貢献事業担当 岩崎 州吾 拝