Pax Japonicaのコンセプトを考える①

2022.05.10

弊研究機構のVisionである「Pax Japonica(パックス・ジャポニカ)」の実現。
この言葉に対し、私たちはどのような定義付けができるでしょうか。

アップルの創始者であるスティーブ・ジョブズは、去る2007年に行われた初代iPhone発表会において同商品のコンセプトを「smart」及び「easy to use」と端的に語っています(参考)。異なる二軸間にあるメタかつポジティブ、そしてシンプルな概念をコンセプトとして打ち出した商品は瞬く間に一世を風靡し、我が国においては人口の約44%がiPhoneを使用しているそうです(参考)。

一方、先日、弊研究機構の姉妹機関である株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)の会員様向けプラットフォームであるIISIA NESTにおいて、「あなたの考えるPax Japonicaとは?」という問いかけをしてみましたが、会員様であっても一言で「これがPax Japonicaである」ということは難しいようでした。

Pax Japonicaにおいてもアップル社のようなコンセプトが打ち出せるとしたら、国内においてはもちろん、世界にもより影響力が増すのではないでしょうか。

そこで今回は、現在までに影響力を誇ってきたPaxという概念、Pax Romana(パックス・ロマーナ)、Pax Britannica(パックス・ブリタニカ)、Pax Americana(パックス・アメリカーナ)の持つ意味について論じつつ、Pax Japonicaのコンセプトについて考えていきます。

(図表:アウグストゥス治世下におけるローマ帝国版図)

(出典:Wikipedia

Pax Romanaは、紀元前27年に始まり、200年以上続いたローマ帝国全体の相対的な平和と安定の時代でした(参考)。ローマ帝国の創始者アウグストゥスとその後継者たちは、領土拡大を行う中で、帝国内の法律、秩序、安全を保障することに重きを置きました。当時ローマ帝国は世界の1/3の人口を獲得するに至りましたが、西暦3世紀後半、疫病と侵略が帝国を荒廃させPax Romanaは終わりを告げました。

(図表:1886年における大英帝国版図)

(出典:Wikipedia

次に台頭したPax Britannicaは、去る1815年のナポレオン戦争終結から1914年の第一次世界大戦の始まりまで、大英帝国が世界的な覇権国家となり、列強間の相対的な平和が訪れた時代を指します(参考)。イギリス勢は世界に先駆けて産業革命を遂げただけでなく、確固たるシーパワーを有し、貿易を通じて植民地を拡大していきました。しかし、19世紀には新興国であったドイツ勢や米国勢でも工業化が進み、植民地競争が激化したことでPax Romanaは解体しました。

(図表:自由貿易協定が結ばれている地域)

(出典:Wikipedia

第二次世界大戦の終結に始まり、米国勢が多国籍企業や非政府組織など世界政治への影響力を拡大させ、相対的な平和と安定が訪れた時代は、Pax Americanaと呼ばれます(参考)。米国勢はグローバリズムを主導しましたが、このことが逆に、国内産業の衰退や新興国の経済発展に繋がり、Pax Americanaは弱体化しました。

Pax Romana、Pax Britannica、Pax Americanaは、軍事力を背景にそれぞれ「政治力」、「技術力」、「経済力」に裏打ちされた平和であったといえます。これらのパワーバランスが時代ごとに変遷し、世界を創ってきたのです。
翻って、我が国においてこの3つのパワーを備えた新たな力が発揮されるとしたら、Pax Japonicaは今までの概念とは全く異なる「平和」を創り出せるということが考えられるのではないでしょうか。

今までの覇権国家とは似たようで非なるものということで、次回もまた、Pax Japonicaのコンセプトについて検討して参ります。

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一般社団法人日本グローバル化研究機構(RIJAG)
社会貢献事業担当 水谷桃子拝