海洋汚染水を巡る科学的アプローチの重要性
(参照:朝日新聞)
外交において,「科学」が外交の場において求められている場面がしばしばみられます。福島原子力発電所の汚染水海洋放出のニュースはがその最たる例ではないでしょうか。
海洋放出をめぐる議論としては、国際原子力機関(IAEA)の基準を満たしていると主張する我が国政府に対して、希釈して放出したとしても海洋における汚染は広がっていく可能性があるとの周辺国との対立が日々報じられています。こうした外交上の対立に対して、「科学」の役割が現在問われているのではないでしょうか。
先般、2月にニューヨークの国連本部にて開催された“Briefing of the General Assembly on Science-based Evidence in support of Sustainable Solutions”でも、SDGsを今後達成するにあたりチャバ・コロシ 第77回国連総会議長から外交における科学的なアプローチの重要性が説かれましたが、参加していた米国勢や英国勢、中国勢などからも賛同の意見が挙がっておりました。
他方で、単に「科学」を外交の場において俎上に挙げれば良いというわけではなく、外交における「科学」が機能するには以下の三つの要素が必要だとの指摘が成されています(参照)。
・政治的中立性
・透明性
・受容性
まず、科学的アプローチを用いる際にまずは政治的中立性が担保されていないと他国からの理解が得られないのは当然と言えます。また、関連して透明性においても同様に重要であり、「科学」を提出する国が偏っていると立証されたデータの信用性を失い、包括的な合意は得られないでしょう。皮肉にも中立性と透明性についてはロシアの代表団より指摘されており、国連における立場の復権という政治的な意図も垣間見えた瞬間でした。それから、中立性と透明性が担保されてもその「科学」が他国に理解できるものでなくてはなりません。とくに2月に出席した国連本部の会合ではアフリカ諸国勢から、そもそも「科学」との接点が無い国と先進国との理解に差がある点が強調されました。
(筆者撮影)
我が国を取り巻く諸問題は、捕鯨問題に始まり、汚染水の海洋放出の問題など多岐に渡ります。我が国だけでそれぞれの正当性を唱えても対立の溝は深まるばかりで、科学的なアプローチが今後重要になってくるのではないでしょうか。
コーポレート・プランニング・グループ 岩崎州吾 拝