人権デュー・ディリジェンスとは

2023.06.16

先日、国際連合開発計画(UNDP)により開催れた「繋がりの中にある世界と人権デューディリジェンス: 持続可能なビジネス慣行を形成 するための日本の政策とアプローチ(Human Rights Due Diligence in a Connected World: Approaches to Shaping Sustainable Business Practices From Japan)」に参加いたしました。

人権デュー・ディリジェンス(以下人権DD)とは十分に浸透しているとは言い難い言葉かとは思いますが、近年においては徐々に浸透しております。

人権DDとは、「企業活動における人権への負の影響を特定し、それを予防、軽減させ、情報発信をすること」を指します。2011年に国連人権理事会において「ビジネスと人権指導原則」が支持されて以降、企業の人権尊重を促す様々な政策が各国で講じられています。 我が国においても去年(2022年)9月に、政府は企業における人権尊重の取組を後押しするために「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました。同ガイドラインは法的な力はないものの、企業に対して人権尊重に向けた取り組みを促進させる重要な指標です。

(図1:デュー・ディリジェンス・プロセス、及びこれを支える手段)

(参考:OECD

「ビジネスと人権」の親和性については懐疑的な方も少なくはないのではないでしょうか。ビジネスにおいて、過剰・不当な労働時間、ハラスメント、不当な差別など,企業活動において発生する様々な「人権問題」が注目されおり、こうした「人権問題」への対応は、企業の価値にも大きく関わります。

更には、M&Aにおいて人権リスクを看過すると、法的・規制・財務リスク、そして風評被害として買収会社に影響を及ぼす可能性があり、法律事務所やコンサルティングファームにその対応に係るの相談が企業から殺到しているという実態もあります。

(責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン)

(参考:経済産業省

また、「人権を尊重する経営」は流動型であり、すなわち世代によって考え方が違うため、そのギャップを埋めていくことも重要です。また、ビジネスの発展とともに日々変化するものでもあることにも留意すべきです。

一例としては、企業による人工知能(AI)の活用が進み、それに伴い人権についても注目が高まっています。人工知能(AI)を活用する過程でプライヴァシー侵害や差別が助長される可能性があり、そうした企業による人工知能(AI)の利用から生じる問題の防止や是正を目的として、人工知能(AI)に関する倫理ガイドラインや「AIと人権」に関する方針を策定するテクノロジー関連企業も増加しています。

(図3:NECにおける人工知能(AI)と人権に関するポリシー)

(参照:NEC) 

今年(2023年)は世界人権宣言75周年にあたります。このように「ビジネスと人権」は目標設定をし、達成したら終わりというわけではなく、永遠の課題であるとも言えます。人権問題は企業価値においての「人権問題」に対する対応としてのフレームワークづくりであっても、こうした取り組みは企業だけではなく国民の「人権問題」への意識を醸成すると共に、途上国へのモデルを示す重要な取り組みなのではないでしょうか。

社会貢献事業担当 中野拝