「水に対する人権(the human right to water)」

2023.06.12

人権というと、多くの方が「貧困」などを想起するでしょうか。性差を巡る人権もよくメディアでは取り上げられています。普段聞き慣れた人権という言葉ですが、水と人権の親和性について論述いたします。

1日に少なくとも3~5リットルの水が生きてゆく上で必須と言われていますが、我が国では、豊富な水資源に恵まれていることから、「水=人権」という認識は乏しいのではないでしょうか。
(出典:https://jsil.jp/archives/expert/2020-5 )

歴史を遡ると、1948年の世界人権宣言をはじめ、1966年に採択された社会権規約と自由権規約ではどの条文を読んでも「水」の文言は記されていません。

水が人権の問題として国際人権法の実務家や研究者の間で広く取り上げられるようになったのは、世界各地で水道事業の反民営化デモが起こった2000年頃からです。

こうして人権が水分野においても叫ばれるようになった背景としては、水が資源として世界的に認められてきたことが一つの要因として挙げられます。

先般、ウクライナ戦争におけるダム破壊ならびに、生活水へのアクセスを阻害させる行為が、人権侵害としてグローバル社会において唱えられたことは歴史的系譜から鑑みても共通認識が醸成された例と言えるのではないでしょうか。実際に、国連や世界水会議の場においても、SDGsを語る上で、貧困問題よりはむしろ水分野における人権が議題として挙げられておりました。

我が国においても「水問題」の本質を、豊富な水資源を有する我が国だからこそ、「水に対する人権(the human right to water)」の認識を醸成していければと考えます。